ふっと思い出す記憶の断片がある。
以前働いていたコンビニに隣接していた、住み込み形式の工場である。
油で汚れた手、絆創膏だらけの指、カップ麺と幕の内弁当とビール、
ベテランが携える週刊大衆、新人が頼むフライドポテト、
会話の中身はいつもパチンコ、みんな毎日同じ服で、
バンパーの凹んだハイエースに小さく乗り込んで、
いつも見る人といつの間にかいなくなってしまった人と、
疲労を滲ませた顔で来る。
瞬時に浮かぶ、工場・労働・お金という単語と目の前の現実が
何となしに働いていた僕には何だかショックであった。
今でも、その断片を不意に思い出す。
© 2012 にしおたいすけ