おもいだすこと
ふっと思い出す記憶の断片がある。 以前働いていたコンビニに隣接していた、住み込み形式の工場である。 油で汚れた手、絆創膏だらけの指、カップ麺と幕の内弁当とビール、 ベテランが携える週刊大衆、新人が頼むフライドポテト、 会話の中身はいつもパチンコ、みんな毎日同じ服で、 バンパーの凹んだハイエースに小さく乗り込んで、 いつも見る人といつの間にかいなくなってしまった人と、 疲労を滲ませた顔で来る。 瞬時に浮かぶ、工場・労働・お金という単語と目の前の現実が 何となしに働いていた僕には何だかショックであった。 今でも、その断片を不意に思い出す。
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